天皇陛下の肖像画をコインに刻んではいけないのか?


文/宮本タケロウ

天皇のご尊顔が印刷された紙幣

世界にあまた存在する君主制の国家では、国王の肖像画が硬貨や紙幣に刻まれるのが一般的です。

イギリスのエリザベル女王やタイのプミポン国王などの肖像画が入ったお金を海外旅行の際に、目にしたことがある人も多いでしょう。

(エリザベス女王のお札)

しかし、日本では天皇の顔をお金に印刷することはありません(神話的存在の神功皇后などは除く)。

この理由は、

「硬貨やお札に天皇の顔を刷ると財布の中でぐちゃぐちゃになってしまい、不敬である」

と言われています。

少なくとも明治時代以降の天皇はこうした理由から記念金貨にすら顔が刻まれることはありません。

天皇のお顔をお金に使用しないのは、日本らしいと言えばそれまでですが、これは「時代錯誤ではないか?」として、一度国会で取り上げられたことがあります。おりしも現在の両陛下のご成婚時のことでした。

中井委員 次は、前回の御即位のときにも質問申し上げたと思うのですが、デザインであります。
 おめでたいツルで統一をされて、立派なデザインだとは思いますけれども、世界中、こういう人、個人に関することで出される記念金貨、銀貨というのはすべてその人の肖像画だ。天皇陛下の御即位あるいは御在位何周年のときにも、どうして陛下のお顔を刻まなかったのか疑問に思います。また今回、皇太子様、雅子様のお顔を刻まずにツルにされた。ここら辺がどうも素直に結構だなと言えない、ひっかかる部分であります
 専門家の中でいろいろ議論されたということでありますが、(中略)この点の経過について、またどういう考えで肖像画を金貨にあるいは銀貨に刻むということを決めなかったのか、お答えをいただきます。

第126回国会 衆議院 大蔵委員会 第10号 平成5年4月21日

両陛下のご成婚時はお祝い事の象徴である鶴が記念硬貨に彫られていましたが、中井衆議院議員は「鶴ではなくて、皇太子さまや雅子さまのお顔をデザインに使った方が良いのでは?」と質問していました。これに対して政府の説明はこうでした。

藤井(威)政府委員: 御在位六十年の記念金貨を発行いたしましたとき、あるいは御即位金貨を発行いたしましたとき、いずれも有識者の懇談会という懇談会を開きまして、各方面の有識者の御意見を伺いました。そのときから懇談会の中で、デザインをどうするかということの一環といたしまして、御肖像を使うということに関する意見を強くおっしゃる方もいらっしゃいましたが、それは日本の文化的な伝統、社会的な伝統からいって適当ではないという意見を強くおっしゃる方もおられまして、結局どうも総意として御肖像というふうにはならなかったという経緯がございます。

同上

「日本の伝統、社会的な伝統から言って適当ではない」ということは、要するに皇族の顔を硬貨に使用するのは不敬だということでしょう。

この見解は令和も同じであって、現在の陛下の即位記念硬貨もご尊顔は刻まれていません。

(令和の天皇陛下の即位記念硬貨)

メダルに刻まれた唯一の皇族

このように皇族の顔はコインに刻まないのが近代以降の日本の流儀ですが、それでは、皇族の肖像画が本当に一度もコインに刻まれなかったのかというと、そうとは言い切れません。

唯一の例外があるのです。 

その「例外」とは山階宮芳麿王。皇籍離脱して山階鳥類研究所を創設した山階芳麿氏です。

山階氏は1900年7月5日、皇族・山階宮菊麿王の第2子として東京市麹町区に誕生。昭和天皇とは実母(範子妃)、香淳皇后とは継母(常子妃)を通じての従兄にあたる皇族(正確には元皇族)で、鳥類の研究から、1966年に紫綬褒章受章。1977年には鳥学の世界のノーベル賞とも言われるジャン・デラクール賞を受賞。1978年「世界の生物保護に功績があった」としてオランダ王室から第1級ゴールデンアーク勲章を受章した日本の鳥類研究の第一人者です。

こうした山階芳麿氏の業績を記念し、財団設立50周年記念の1992年に、日本の鳥学研究の発展と鳥類の保護活動に寄与された個人あるいは団体を顕彰する目的で「山階芳麿賞」が設けられました。

その「山階芳麿賞」のメダルがこちらです。

(山階芳麿賞)

表面には山階芳麿氏、裏面には1981年に山階博士らが新種として発表したヤンバルクイナが刻まれます。

ちなみに、旧皇族の名前を関した民間の表彰賞は「東久邇宮賞」が有名ですが、東久邇宮賞は東久邇宮二代目の盛厚氏が関わって創設されたものの、記念メダルには顔は刻まれていません。

(東久邇宮国際文化褒賞)

菊の紋章がデザインに取り入れられていますが、これは東久邇宮家の家紋(正式には家紋と言いませんが、便宜的に「家紋」とします)でも、皇室の16弁菊花紋でもない、15弁の「菊の紋章」がデザインです。

さすがの「東久邇宮賞」も、皇室の16弁菊花紋を使うのはためらったのと、東久邇家から家紋の使用許可は得られなかったということでになりますでしょうか。

皇族の家紋が商標登録された例

東久邇宮をはじめ、皇籍離脱後の旧皇族は経済状況に非常に苦しんだと伝えられます。近年ではイギリス王室を離脱したヘンリー王子・メーガン妃夫妻が自身の称号をもとに「サセックス・ロイヤル」をブランドとして商標登録するかと話題になりましたが、実は、日本の旧皇族もそれに近いことがありました。家紋をブランド化した例があったのです。

旧皇族が家紋を使ってブランド化したおそらく唯一の例。それは香淳皇后のご実家、久邇宮家が皇籍離脱後にプロデュースした久邇香水です。

(久邇香水)

久邇香水が売られ始めたのは戦後すぐ。当時は「久邇」のその華麗な名前と品質により人気で、非常によく売れたそうですが、現在はブランドを売却したため、現在の久邇家とは無関係だそうです。

ちなみに同じく皇籍離脱した旧皇族の竹田宮家からは、竹田宮恒徳王の三男の子、竹田恒泰氏が有名ですが、竹田恒泰氏の主宰する竹田研究会では竹田家の家紋は使っていないようです。

(竹田研究会)

また、竹田恒泰氏は「国酒禊」という日本酒の銘柄をプロデュースし、その魅力的な揮毫も担当していますが、「国酒禊」にも竹田宮家の家紋はなく、そして、経営する利尻昆布100%使用のラーメン屋「くおろび」にも竹田宮の家紋は、化学調味料と同様に不使用です。

(竹田恒泰氏プロデュース・揮毫の「国酒禊」)
(竹田恒泰氏の“自称本業”、ラーメン屋「くろおび」)

さすがの竹田恒泰氏も、勝手に家紋を使うと本家に怒られるのかもしれませんし、「英主・明治天皇の玄孫」とは言いつつも、菊のご紋章を商売に使うのはいくらなんでも…と、遠慮しているのかもしれませんね。

天皇や皇族のお顔をお金に使うのは…?

さて、少々わき道にそれつつ、天皇・皇族のご尊顔と家紋の使用について概観してみましたが、「天皇や皇族のお顔は硬貨や紙幣に使わない」という原則について、皆さまはいかが思われますでしょうか。

ちなみに、冒頭に紹介した国会の議論は、このような形で終わっています。

中井議員:文化的に伝統的に肖像画を刻むのがなじまない、こうおっしゃるけれども、かつて一万円札には聖徳太子がずっと使われておったのであります。(中略)

今後またこういうのが何年先にあるかわかりませんけれども、ぜひ御議論をいただいて、素直に肖像画が採用されるように。(中略)素直に喜べるようなコインであるように御努力をいただきたい、このように思います

同上

ちなみに、この「肖像画コイン問題」を国会で取り上げた「中井議員」は、2012年に国会の開会式で「早く座れよ、こっちも座れないじゃないか」という、いわゆる“皇族への不敬発言事件”を起こした中井洽・民主党衆議院議員でした(「不敬」という言葉が付きまとう人のようです)。

確かにコインに使うのは不敬というのももっともですが、もっと身近に両陛下のご尊顔を拝察するというのも嬉しい気もします。

すくなくとも、記念硬貨にはご尊顔を刻印しても良いかもしれませんね。


12件のコメント

この記事には関係ないのですが、
Yahooの女性自身の記事で
日本の伝統は女系天皇
という記事がアップされています。

女性自身記事でなぜ? この時期に?

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気にしなければいけないのは、悠仁さまの後から認める、になるかもしれないことです。
一部それを指摘してる方もいましたよ。

102

なるほど、サラ様はご自分の国民からの讃美を受けることが一番で国民の目が届かないところでの「イジメ」は気晴らしのようです。

であれば、国民の讃美が多くなる方に舵を切るのも抵抗はないのでしょう。

気晴らしの対象がどこに向くかが怖いですが。

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インフレ目標は、国債やETFを買いまくっても効果はなかったけど
1万円札をナルヒトに変えておけば達成していたはずなンだわ

2
29

=佳子さま、ろうあ連盟の非常勤嘱託職員に=

ヤフーニュースで知りました。
ニートと叩かれ、今度は働くと叩かれ。
御愁傷様です。
早くマコさま問題解決しないと、まだまだこれかも叩かれますよ。

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1

無職!
批判は聞こえた・見た様子ですね。

有職よ!と言いたいだけ。
残念なこうぞく。

ひらがなでいいよね?
他の人と同じじゃね?

ボランティア、つまり無報酬どころか持ち出しで、本などの点訳をしています。何故「手話」だと報酬が出るのですか? 佳子さん、ろうあ連盟で仕事するなら、ボランティアにするべきでしょう。

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皇太子殿下ご夫妻のご結婚記念
500円硬貨は不思議な力をお持ちです。

たまたま職場で見かけて
自分の500円玉と交換し
ほかの小銭と別にして財布の隅に大切に保管していました。

ところが、どうしても500円を使う必要に迫られ 泣く泣く記念硬貨で支払ったのですが

5年後、買い物のお釣りに記念硬貨が入っており 全身が震える思いがしました。
「これは一生手放してはいけないのだ」両殿下からのメッセージだと思い 今も財布の一番解りにくいポケットに入れてあります。

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